曹洞宗家庭信条その⑤ その他
自らを信じ今をつとめようみ法(のり)こそわれらの依るべ
現代は世の中が複雑化し、生きてゆく条件が厳しくなりつつあります。
人々は内面で自信を失い、果ては絶望にまで追いやられる。
抑うつ症状、青少年の自殺、一家心中等々はそれを物語っています。
この時代に何をよりどころにして生きていったらよいのか。
ここに釈尊最後の説法を思い起こしたいと思います。
偉大なるよりどころを失わんとして、憂いに沈む弟子達に向かってこう言われました。
「自分自身を灯明とし、よりどころとするがよい。法を灯明としてよりどころにするがよい。他の者にたよってはいけない。」
いわゆる自灯明、法灯明の遺訓です。
道元禅師は「仏道を信ずる者はまず自己を信ずべし」といわれ、瑩山禅師は「人々これ道器」と説かれました。
自己を信ずるとは、傲慢になったり自信過剰になったりする事ではなく、自己に潜む生命力や運命を切り開く無限の本性を信じ、よりどころとする事です。
それでもなお、おぼつかない我らの足下を照らしてくれるものは、法の灯明であり聖者の語られた真理の灯明なのです。
いたずらに思案の淵にたたずむのを止めましょう。
迷いの現実こそきっかけとして、今こそ眼前の義務を果たし、前を向いて今日のお努めに専念しましょう。